人は誰だって仮面を被って生きている。

親しい友人はもしかしたらあなたを騙そうとしているかもしれない。
信用している恋人は浮気をしているかもしれない。
いつも挨拶を交わす隣人は極悪人かもしれない。

仮面の裏に隠された本当の姿を知る事は出来ない。


とまあ、何お前ストーリーテラーみたいに語り出してんだよ死ねよカスって話なんですけど、やっぱり人って誰でも仮面を被って生きていると思うんです。

以前、職場に宮本さんという人がいましてね。
宮本さんは中途半端な時期に入社してきたオジさんでした。

頭髪には少し白髪が混じり、そこそこ年期の入った容姿をしています。
そして、新しい職場なのに物怖じせず初日からドッシリと構えていました。

自分はこれに違和感を覚えましてね。
大抵の場合、新しい職場や環境だと少しくらいは物怖じするじゃないですか。
しかし、宮本さんからはそれが全く感じられないんです。
それに、オーラと言うか装いと言うか、宮本さんから出ているのはお偉いさんのそれなんですよ。

何か腑に落ちない。

ここで自分は宮本さんについて考えてみたんです。
この人は一体何者なのだろうか。
得られる情報を精査し、脳内で様々なパターンを想定します。


遥か彼方の銀河系で・・・

ジェダイの騎士と銀河共和国が滅亡して久しい時代。
平和だった銀河系は帝国軍によって支配されていた。

ジェダイの騎士の生き残りであるミヤ=モト・ケノービは帝国軍を討伐するための準備を進めていた。
そして、強力なフォースを自在に使いこなす優秀な戦士を発見する。
ミヤ=モト・ケノービはその戦士を仲間にするべく彼の職場へと潜入するのであった。


とまあ、その戦士こそが管理人さんなわけで、何かいきなり神々しく輝く剣を渡されて「ダース・ベイダーを倒してくれ。」とか言われちゃったらどうしようとか思ったんですけど、ミヤ=モト・ケノービって何?
コイツまた意味の分からない妄想が始まったよ!
こんな妄想ばかりしてないで仕事しろよな!
もう死ねばいいのに!暗黒面に墜ちて死ね!

まあ管理人さんが銀河の命運を握っているなんて銀河の価値はどれだけ低いんだよって事になるので、宮本さんがジェダイの騎士というのはないと思うんですけど、真面目な話、この人には腑に落ちない点がいくつもあったので真剣に考えてみたんです。
そして、ある結論に至りました。

「宮本さんは本部の査察なのではないだろうか。」

いやね、企業のお偉いさんが職場を査察するために身分を隠して潜入してくるというのを聞いた事があるんですよ。
自分の職場にも通常の査察はあるんですけど、いつも査察の人がやってくると直ぐに仲間内で情報伝達が行われて皆普段とは別人のようにテキパキと働くから全く意味を成していないんです。
後輩の遠藤君なんていつも死んだ魚のような目をしているのに、それこそ釣りたてのサバみたいに急にピチピチと活気よく働き出しますからね。
なんか顔も魚みたいだし。

なので、本来の様子を探るためにお偉いさんが仮面を被って潜入してきた疑いが非常に強いのです。
というかもうこれ100000000%査察ですよ。
で、サボっている人間を見つけてクビにするに決まっているんです。
こりゃあ油断が出来ません。

自分の職場ってわりと自由度が高いので普段は上司の監視はあまり厳しくないんです。
定時になると牢屋の前に横一列に整列させられて、端の人から順番に「1!!」「2!!」「3!!」「4!!」と監視役の監守さんに点呼をとらされたりとかもしないんです。

なので、トイレに行った帰りに休憩スペースの自販機でコーヒーを飲んで休むという、それこそ仕事からのプリズンブレイクをしたりも出来るんです。
ただ、これってサボりになるわけですよ。
自分はよく休憩スペースで鼻くそをほじったりして現実社会から逃亡しているんですけど、潜入の宮本さんが来てからは真面目に働くようになりました。
サボっている現場を宮本さんに目撃ドキュンされたら即刻死刑ですからね。
もう執行猶予も付きませんよ。

しかしですね、トイレに行こうとして休憩スペースの横を通ったら肝心の宮本さんが死んだ魚のような目をして一人でイスに座っとるんです。

おいおい、あんたがサボってどうすんだよ!

「管理人君も少し休まないかい?」

初日とは別人のようにやつれた顔。
もうオーラが全く感じられない。
空腹で死にかけている小鳥でももう少し元気だろうというレベル。
おまけに「はぁ~、疲れた~。」を連発して、負のオーラに巻き込もうとしてくるんですよ。
これじゃこっちまで疲れるじゃねぇーか!

この時ピンときましてね。
忘れてはならないのは、宮本さんは査察の人間という事なんです。
おそらくこれは罠ですよ罠。
演技です。

自分はいかに仕事をサボるかに情熱を注ぐような人間で、その結果、上司の送別会で皆で色紙にメッセージを書いてプレゼントしようってなった時に自分にだけその色紙が回って来ないという残念な扱いになっていますから、それはもうプロ野球で例えたら背番号が3ケタくらいあるようなよく分からない選手みたいになっていますから、上からしたら自由契約という事実上の解雇にしたいはずなんです。
しかし、一方的に解雇するのは法的な問題も発生してしまう。
なので、何か正当な理由とその証拠を得たいはずなんです。

そこで考えられたのがこの策なのだろう。
宮本さんは管理人さんを休憩スペースに誘い込んでサボらせて、その瞬間に「はいクビ。」という4文字のファイナルジャッジを下そうと狙っているに違いありません。

なんて汚い大人なんだ!
そこまでしてクビにしたいのか!

しかし、そうはいきませんよ!
何が何でも生き残ってやる!
このデスマッチ、受けて立とうじゃありませんか!
絶対負けねぇーぞ!

この日から管理人さんと宮本さんの水面下でのバトルが始まった。
文字通りクビを賭けた戦いだ。

翌日も宮本さんはやたらと話し掛けてくる。
決まって「はぁ~、疲れた~。」という、こちらも疲れてサボりたくなってしまうような、暗示とも言える言葉で攻めてきます。
エレベーターで一緒になった時なんてもうマンツーマンですから、逃げ場なしのデスマッチですよ。

とにかく宮本さんのペースに飲まれたら負けだ。
サボっていると判断されてクビにする理由を与えてしまう。
一時も気が抜けないバトルが何日も続きました。


そんなある日、この勝負に決着を付ける大事件が起こった。

その日もいつものようにオシッコをしにトイレに行ったんですけど、入った瞬間にスゲェー強烈な臭いがしたんですよ。
で、何気なくドアが半開きになっている個室の方に視線をやったんですけど、そしたらもうね目を疑いましたよ。

とその前に、ここからちょっと汚い話しになるので、もしお食事をしながらご覧になられている方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。
お食事中の方は今直ぐ大盛りでおかわりして下さい。
この記事をおかずにしてモリモリと食べて下さい。

で、話を戻しますとですね、半開きになった個室に目をやったんです。
そしたらですね、その個室にはうんこがぶち撒けられていたんですよ。
これが常軌を逸したぶち撒け方で、何をどうやったらこんなになるのか全く理解不能なんです。
文章では伝わらないと思うんですけど、本当に悲惨な状況で地獄絵図みたいになっとるんですよ。

これはもうね、テロですよテロ!
もう官房長官も壇上に上がって「極めて卑劣な犯行である。」と遺憾の意を表明するレベル。
日常は非日常へと一変した。

あまりの惨状に尿意はすっかり治まり、自分は脱兎の如くトイレを後にしました。
で、どうして良いのか分からなかったんですけど、とりあえずこの惨状を同僚の渡辺君に伝えましてね。
そしたら、渡辺君ったら仲間を集めだして「よし!見に行こう!」とか言いやがるんです。
こいつ頭おかしいんじゃねぇーか?
まあ勿論自分も再び行きましたよ。

いい年こいた大人が皆で仕事中にうんこ見に行っていますからね。
この会社もう終わりだよ!

そして、後輩の入沢君が推理をし始めるんです。

「このトイレは大勢が使用するから犯人の特定はまず不可能だろう。しかし、経緯ならば推理が可能だ。おそらく犯人は限界に近い状態だったので、ズボンを下ろした時の一瞬の気の緩みで一気に漏らしてしまったのだろう。これは事故だ。」

あー、これ自分も小5の時に経験があるから分かるわ。
子供の時って学校でうんこするのって、人類の八つ目の大罪みたいな扱いをされるじゃないですか。
6時間目の体育のサッカーで漏らしそうになったんですけど、学校で出来なかったから家に帰るまで我慢していたんです。
で、ダッシュで家のトイレにゴールインしてズボンを下ろしたらその瞬間に出ちゃいましてね。
モノは全然ゴールインしてなかった。
もうPKを外した選手みたいに頭を抱えながらその場に崩れ落ちた。

そんな泣きたくなるような出来事がフラッシュバックしたのはさておき、トイレの惨状を目の当たりにして皆PTSDになる寸前だったので、休憩スペースに退避して心を落ち着かせました。
まあ5人もいると話に花が咲いちゃうんですよね。
仕事も忘れてコーヒー片手に談笑ですよ。
皆で仲良くサボタージュです。

そしたら、なんか知らないオジさんがやって来ましてね。

「君たち仕事はどうしたのかな?」

本部の査察の人だったわ。

この後、上司と査察の偉い人に呼び出されてこっ酷く怒られました。

横一列に整列させられてスマップの謝罪放送みたいになってた。

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唯一違う点を挙げるとすれば、この場にいる5人全員、ジャニーズとは程遠いブサイク面だという事だろうか。
渡辺君なんてロバみたいな顔してるし。

説教は一時間近く行われ、「青いイナズマ」ではなく上司の「怒りのイナズマ」が降り注ぐのでした。


ちなみに、宮本さんは仮面を被った査察でも何でもなく、ただのやる気のないオジさんでした。
何でも、以前務めていた会社をリストラされたらしい。
なるほどね、クビになった理由が分かるような気がするわ。

自分も宮本さんみたいにクビにされないよう気を付けよう。

この日から仕事をサボっているのが周囲にバレないよう、真人間の仮面を被るのでした。


恵方巻きってあるじゃないですか。

節分の時に食べると福が訪れるというやつ。
これって風習だから土地によって差があるんだろうけど、最近急に広まったような気がするんですよね。

で、この恵方巻きって企業が利益を生むために広めたとかで、なんか色々と叩かれているじゃないですか。
別にこんなもの誰が何の目的で広めようがそんな事どうでもいいじゃねぇーかって思うし、世の中には何やっても突っかかってくる面倒くさい人間がいるなとも思うんですけど、しかし自分もこの流れに便乗して一つ言っちゃおうかと思いましてね。

恵方巻きから派生したやつで恵方ロールケーキというのがあるじゃないですか。
流石にこれは反則だろって思うんです。
もう自分が審判だったら「ピピーーー!!!」と笛を吹きまくってレッドカードを5枚くらい出したくなっちゃうレベル。
問答無用でペナルティーキックですよ。
まあ自分はサッカーのルールは全然詳しくないし、アルシンドがハゲてるってくらいの知識しかないんですけど、可能ならボールを5個くらい用意して同時にペナルティーキックしてもいい。

何がそこまで管理人さんをレッドカードのジャッジに駆り立てるのかと言いますとですね、最近の子供は、ナウいチルドレンは節分にケーキを食べているのかという事なんですよ!
だって自分が子供の時は恵方ロールケーキなんてオシャレなものはありませんでしたからね。
節分に食べていたものと言えば豆ですよ豆。
英語で言うとビーンズですよビーンズ。
リピート、アフタ、ミー。
ビーーーンズ!

で、そのビーンズを「縁起が良いから食べなさい」と言われて母親から渡されるんです。
これが乾燥した豆で超絶マズイいんです。
縁起だか何だか知らねぇーけど、何でこんなハトのエサみたいなもん食べなきゃいけねぇーんだよクルック~!

そして、マズイから捨てようとすると、母親が強引に口に入れてきて意地でも食べさせようとするんです。
もう鬼ですよね。

とまあ、管理人さんはそんな残念な節分を過ごしていたわけです。


で、節分と言えばやはり鬼ですが、鬼というのは意外と身近な所に存在していると思うんです。
「鬼の空念仏」「鬼に金棒」「渡る世間に鬼はなし」というように、鬼の入ったことわざも多い。
無慈悲な人間を鬼に例えたりもする。
それくらい鬼というのは人々に意識されているのではないでしょうか。

自分が子供の時も恐怖の象徴のような、それこそ鬼のような奴がいた。



あれは幼稚園の年長の時でした。
年齢で言ったら6歳だけど、今でもあの日の出来事を鮮明に覚えています。

自分のクラスにはたなか君という子がいましてね。
おそらく「田中」だろうけど漢字が分からないので一応「たなか」としておきます。

このたなか君は幼稚園児とは思えぬ程の巨漢でクラスのボス的存在なんです。
分かり易く例えると、洋画に出てくる刑務所ってロン毛のマッチョが囚人たちを仕切っているじゃないですか。
まあ、たなか君はマッチョじゃなくてデブなんですけど、大体こんなイメージです。
ダンプカーのように身体が大きく、気性も荒く誰も彼には逆らえないんです。

休み時間におもちゃで遊んでいると皆から奪い取っていく。
少しでも抵抗しようものならば容赦なくやられてしまう。

いやね、何が怖いかって、いくら凶暴な奴と言ってもこういうのって普通は殴ったり蹴ったりとかじゃないですか。
もうね、たなか君はそんじょそこいらのワルとはわけが違いますよ。
殴ったり蹴ったりもしてくるんですけど、このデブ怒ると首を絞めて本気で殺しにかかってくるんですよ!
もう覚せい剤でもやってるんじゃないかってくらいクレイジーなんです。

なので、他のグループの子たちはたなか君を恐れて皆服従するようになっていきました。
勿論、自分も反抗する勇気はなかったので、遊んでいる時にたなか君がやってきたらおもちゃを献上して機嫌を損ねない様にしていました。

そんな獄中のような幼稚園生活が続いていました。

そして、節分の日。
その日は行事で豆を撒く事になりましてね。
鬼のお面を被った園長先生が出てきて豆を投げるという、まあ何のヒネリもない普通の行事でした。

先生から豆を受け取って鬼に豆を投げつける。

「鬼は外ーーーー!!」

皆、鬼を退治してやろうと躍起になっていました。
たなか君なんて鬼のヒザに蹴りを入れてましたからね。
おいおい、園長先生もう爺さんだぞ。
そんな事したら死んじゃうって!
もうどっちが鬼なんだか分からねぇーよ!

この時、自分は気が付いたんです。

「鬼はすぐ近くにいたんだ!」

自分の目には確かに鬼が映り込んでいた。
恐怖の象徴である鬼だ。

そして何より、本当の鬼は己自身の心に住みついていた。
理不尽な暴力に屈し、脅えながら暮らし、見て見ぬフリをしてきた。
そんな脆弱な心に鬼は巣食っているのだ。

今こそ決起する時だ。

とまあ、幼少期の管理人さんはたなか君と戦う事を決意したんです。
鬼退治ですよ。

まあしかし、真っ向勝負をしたって10000000000%勝ち目はありません。
たなか君はダンプカーのように身体がデカイ。
これじゃ結果は目に見えています。

なので、本人にバレないように、あくまで隠れながらコッソリと仕返しする事に決めました。

いや、仕方ないじゃないですか!!
だってあのデブ本当にクレイジーなんですから!
全盛期のスタン・ハンセンくらい凶暴凶悪なんですから!
命がいくつあっても足りねぇーよ!!
この恐怖は文章では絶対に伝わらない。

そんな凶暴凶悪なたなか君にどうやって仕返しをしてやろうか。
それは簡単だった。

豆撒きの豆を背後からおもいっきり投げつけてやろう!
園庭は豆を撒く子たちでお祭り騒ぎになっている。
絶対にバレやしない。

こうして、鬼を退治する孤独な戦いが始まった。

早速、先生の所へ行って豆を補充する。
そして、息を殺しながらスナイパーのようにたなか君の背後へ回った。

「鬼は外ーーー!!」

豆をぶつけたら他の子たちに紛れて身を隠した。
こっそりとたなか君の方を見たらハトが豆鉄砲を食らったような顔になってた。
いや、デブが豆鉄砲を食らったような顔になってた。

そしてもう一度。

「鬼は外ーーー!!」

これが面白いくらいヒットしましてね。
しかも全くバレていないんです。

このまま何回もぶつけて鬼をやっつけてやる!

「鬼は外ーーー!!」

豆がなくなったら先生の所へ戻ってポケットがパンパンになるまで補充し、次の戦いに備えました。
そして、再びたなか君の背後に忍び寄る。

「鬼は外ーーー!!」

まだまだ、これは皆の分だーーー!!

「鬼はそ・・・・」

まあ、10回くらいやったんで流石にたなか君も学習しましてね。
気が付いていないフリをして誰が投げてきているのか探っていたみたいです。
もうこちらが野球のピッチャーのように振りかぶっていた時におもいっきり目が合いましたからね。

やべぇーーー!!!
殺される!!!

自分は今までデンジャラスな事ばかりしてきたので、死にかけた事だったり死を覚悟した事が人生の中で何回かあるんですけど、おそらく死が間近に迫るという感覚を味わったのはこの時が最初だったと思います。

たなか君はデブだから管理人さんだったら走れば逃げられるんじゃないかって思うじゃないですか。
いやいやいや、そんな考え甘いですよ。
恵方ロールケーキくらい甘いっすよ。

そりゃあなぜかって、たなか君、動けるデブなんですよ!
ズッシリした体型のくせにすげぇー足が早いんです。

さっき、たなか君はダンプカーのように身体がデカイって書いたじゃないですか。
これは大きさだけを例えたのではなく、走れるという事も伝えたくてダンプカーに例えていたんです。

そんなたなか君が豆をぶつけられて、エンジンがオーバーヒートしそうなくらい激おこぷんぷん丸になっとるわけですよ。
もう穴という穴から蒸気が噴き出していましたし、イメージですけど。
絶体絶命です。

そして、数秒間目が合った後すげぇー勢いで突進してきて、それはもうブレーキの壊れたダンプカーの如くこちらに突っ込んできましてね。
もう10メートルくらい吹っ飛びましたよ。
いや、10メートルはないだろうけど、それくらいの感覚でした。

で、泣きながら顔を上げたら、たなか君ってば鬼の形相になっていました。
顔を真っ赤にしながら怒り狂って、本当の赤鬼になってたわ。



とまあ、子供の頃の管理人さんは鬼と死闘を繰り広げていました。
鬼というのは身近なところに存在しているものなんです。

今日はロクに仕事もせずこんな懐かしい事を思い出していたらお昼になっていました。

で、なんか小林君が恵方巻きを大量に持って来とるんですよ。
もう恵方ビジネスでも始めるんじゃねぇーかってレベル。

「どしたのこれ?」

「この前近くのスーパーで売れ残りを処分してたんで買い溜めしたんすよ。残り物には福があるってやつっすね。管理人さんにも一つあげますよ。」

まあ、節分って先週じゃねぇーかとか、保存が出来ないから処分価格だったんだろとか、残り物には福っていうかこんなもん買い溜めして食費の負担を減らそうとしている時点でお前に福は来てねぇーだろとか色々と思いましたが、そういう鬼のような酷い事は言わないでおきました。

「そういや管理人さん、めざましテレビ見ました?恵方巻きって北北西の方角を向いて食べるじゃないですか。女子アナが生放送で北北西を「きたきたにし」って間違って言っちゃってスタジオが騒然としてたんすよ。マジでバカじゃないっすか?」

「そんなのわざとに決まってるじゃねぇーか。キャラ作ってんだよ。一流の大学を出て一流の企業に勤めてる女子アナがそんなの間違えるわけないじゃん。以前おバカタレントとかいうのも流行ったけど、ただのバカがテレビに出て大金を稼げるわけがない。本当のバカってのはね、ブログにうんこ漏らした事とかを書くような奴を言うんだよ!もっと根の深い問題なんだよ!」

「えっ!?管理人さんブログやってるんすか!?」

当然ですが、ブログをやっているというのは隠しておきました。
こんな下劣なブログやってるなんて口が裂けても言えねぇーよ!

「というか、お前うんこ漏らした事で何で真っ先に管理人さんを想像するんだよ!!」

「えっ?わりとそういう認識ですけど。」

ちょっ!!待っ!!何!?
管理人さんって周囲からそういう認識をされてんの!?
お漏らし系キャラなの!?

「ふざけんじゃねぇーー!!小林テメェーぶっ殺す!!」

この後、ケンカになってお互い鬼の形相で罵り合いました。


人は誰でも簡単に鬼になってしまうのかもしれない。
小さな切っ掛けで心の奥底に眠る鬼が目覚めてしまうのだ。
そして、鬼に支配された者は心の弱さが露呈してしまうのを恐れ他者を執拗に攻撃する。
幼稚園の時のたなか君も、醜い鬼に心を支配されてしまっていたのだと思う。


節分というのは単に厄祓いの行事ではなく、先人たちが後世の人々を己の心と向き合わせるため、戒めの意味を込めて残したものなのかもしれません。
「鬼は外」という掛け声には、胸の奥に潜む邪心を体外に取り除くという、そういった意味もあるのではないでしょうか。

何だ、節分なんてマズイ豆を食べさせられてばかりだったけど、なかなか捨てたもんじゃねぇーな。
ストレスの多い現代社会にとってはとても有意義な行事じゃねぇーかと甚く感心するのでした。


ちなみに、小林君とは直ぐに仲直りしました。

そして、二人で「きたきたにし」の方角を向きながら仲良く消費期限の切れた恵方巻きにかぶりつくのでした。



『お前がタマキンを覗くとき、タマキンもまたお前を覗いているのだ』 ニーチェ

お前ニーチェの名言を引用してなんて酷い事を書きやがるんだ、死ねよカス!って思うかもしれませんが、タマキンが痛いんです。
正確にはタマキンそのものではなくてタマキンの袋なんですけど、どれくらい痛いかというと密入国しようとして電気が流れているフェンスにタマキンだけ触れて感電しちゃった時の痛さが1500だとすると、管理人さんのタマキンの痛さは軽く50000000は越えている。
まあフェンスを越えるのにタマキンだけ触れちゃうなんてお前どんだけアクロバティックに越えようとしたんだよ!しかも失敗してるじゃねぇーか!って話なんですけど、とにかくタマキンが痛いんです。


順を追って話しますと、昨年12月くらいからお腹の下辺りに異変を感じていましてね。
なので、年明けから専門医のいる病院に行って大腸の検査を受けたりしていたんです。
なんかもうプロジェクトXに出てきそうなスペシャリストのお医者さんが診てくれたので大腸の方は回復に向かっているんですけど、そしたら今度はタマキンが痛くなっちゃったんですよ。

で、自分のタマキンはNHKの「ダーウィンが来た!」に出てくるヒゲじいみたいにモジャモジャしているんですけど、

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そのヒゲじいみたいなタマキンを上に引っ張って前かがみになりながらニーチェの名言の如く裏側を覗いてみたんです。
そしたらもうね、目を疑いましたよ。

オーー、マイ、ゴッッッド!!!!
無神論者の自分も胸の前で十字を切って神に祈りたくなりましたからね。

タマキンの裏側に赤黒い斑点が沢山発生して血管も変色しているじゃありませんか。
なんかタマキンだけゾンビみたいになっとるんです!

例えば、これをヒゲじい主演で映画化するとするじゃないですか。
で、ゾンビ映画の巨匠ジョージ・ロメロ監督がメガホンを取るとするじゃないですか。
そしたら、タイトルが「タマキン・オブ・ザ・デッド」になるんじゃないかってくらいのレベルなんです。
例えがよく分かりませんね。

とにかく、もうヒゲじいがアンデッド寸前になっとるんですよ。

「大丈夫か!!?ヒゲじいーーー!!」

「うう・・、タスケテ・・・」

こりゃいかん、一刻も早くどげんかせんといかん、「ダーウィンが来た!」が最終回になる!
スマスマが打ち切られたばかりなのにダーウィンが来た!まで打ち切りになったら一大事じゃねぇーか!

で、自分はてっきり大腸の病気の合併症でタマキンにも異変が起きているのかと思っていたんですけど、どうやら全く関係が無いらしいんです。
なので、泌尿器科のある近所のクリニック行って診てもらう事にしました。

しかしですね、名前を呼ばれて診察が始まるかと思ったら、イスに座った瞬間に医者から「うちは泌尿器科なので診れません。皮膚科じゃないと無理です。」と言われて軽くあしらわれちゃったんです。
いやいやいや!確かにポコチンは正常ですけど、タマキンの病気だって泌尿器科でしょう!?

これ今回初めて知ってとても疑問に思ったんですけど、男性の陰部ってポコチンもタマキンも基本は泌尿器科になるんですけど、自分のようにタマキンの袋に症状がある場合だと皮膚科のカテゴリーになってしまう医院もあるらしいんです。
何で同じ部位にあるのに縦割り行政みたいに別れちゃってんの?
医院の運用とか理由が色々とあるんだろうけど、これおかしいだろ!

そして、皮膚科は皮膚科でこれまたタマキンの症状によっては診てくれないんですよね。
だって皮膚の専門でタマキンの専門じゃないもん。

じゃあタマキンが病んだら一体どこに行けば良いんだよ!
もうそんなんだったら「泌尿器科」と「皮膚科」の他に、新しく「タマキン科」を作ってくれよ!

何でタマキンはこんなに肩身の狭い思いをしなければいけないんだ。
世の中はタマキンに対して冷酷だ。
ヒゲじいが涙を流している。

この日はタマキンのフラストレーションを抱え、それはもうタマストレーションを抱えたまま帰宅しました。
翌日、今度は泌尿器科や皮膚科、他にも内科やら耳鼻科が入っている大きなクリニックに行きました。
流石にこの規模のクリニックだったら診察出来ないはずがありません。

しかし、これがもう大混雑でしてね。
受付もクリニックとは思えぬ程の長蛇の列。
おまけに、受付で看護師さんに症状を聞かれた時、タマキン袋の正式名称である「陰のう」という言葉が出てこなくて「男性器に赤いブツブツが出来ました。」って答えたら、隣で同じように受付をしていた女子大生くらいの子におもいっきり二度見されました。
絶対変な病気だと勘違いされたわ。

で、問診票を受け取って「ヒゲじいが死にそう、タスケテ!」という主旨の説明を書いて提出し、不動明王の如くイスに腰掛け名前を呼ばれるのを待ちました。
そして、待つ事数十分。
「管理人さん、2番の診察室へどうぞ。」とアナウンスが入ったので、診察室に入って医者に症状を説明したら早速視診してくれる事になりました。

良かった、壁は一つクリア出来ました。
もう診てくれるだけでホントありがたいです。
ありがとう先生!
ヒゲじい、君は見捨てられてなんていない。
一人じゃないんだ。

喜びのあまりヒゲじいとハイタッチをしたくなりましたが、周囲からしたら急にタマキンにタッチしだす変態にしか見えないのでやめておきました。
とにかく診てくれる事になって本当に良かったです。

しかし、喜んでいるのも束の間。
陰部を診るのって、診察台に座ってそれで患部だけ見えるようにタオルとかを被せてやるのかと思っていたんですよ。
というか、帰ってから調べてみたら自分の思っていた通りタオルは被せないまでもこういうのって診察台で診るそうなんです。

しかしですね、もう信じられんすよ。
診察台には行かず、その場に立ってズボン下ろして仁王立ちですからね。
どこの病院にもある背の低いクルクル回る丸いイスがあるじゃないですか。
その横に突っ立って管理人さんポコチン丸出しなんですよ。
何このシュールな画ヅラ。

しかも、すぐ横にはそこそこお綺麗な看護師さんもいて補佐のためにこちらを見ていますからね。
おまけに、医者が診やすいようにタマキンを上に引っ張ったら、その看護師さんがスポットライトみたいな大きなライトをスゲェー近くから照らしてくるんですよ。
これじゃ看護師さんにもヒゲじいみたいなタマキンが丸見えじゃねぇーか!
恥ずかし過ぎるんですけど!

「逃げろヒゲじい!!ヒゲじい隠れて!」

で、タマキンの赤黒い斑点は「陰嚢被角血管腫」だと言われました。
いやね、これって自分も事前に調べて知ってはいたんですよ。
陰嚢被角血管腫は良性の腫瘍で自然に治るから治療は特に必要ないんです。
ただ、陰嚢被角血管腫って痛みは発生しないはずなのに、管理人さんの場合は激痛があって、しかもそれが日に日に増していっているんですよね。
それに陰嚢被角血管腫は比較的高齢な人を中心に発症するものなので、そう考えると少し腑に落ちないんです。
自分が調べたところ、タマキンが痛くなるのはタマキンの皮膚が炎症を起こしている場合と、精巣が炎症や血流障害を起こしてタマキンに症状が現れている場合とがあるそうで、色々な病気があるみたいです。
あと、管理人さんの場合はタマキンだけではなく、お尻の谷間にかけても痛みがあるので、やはり他の病気の疑いは拭い去れません。

なので、タマキン以外も痛いですと説明したら、お尻も診てくれる事になりました。
しかしですね、これまた信じられん事になったんですよ。
医者が「それじゃ後ろ向いて前に屈んで。」と言って、その場でお尻を診ようとするんです。

やっぱりここで診るんかい!!
いやいやいや!あんたこれどう考えたっておかしいだろ!!
何でここで診ようとすんの!?
そもそも、お尻の谷間って前に屈んだくらいじゃ見えねぇーだろ!!
頼むから診察台で診てくれよ!!

想像してみてくださいよ。
ズボンを下ろした状態で前屈ですよ。
もうクレヨンしんちゃんのケツだけ星人みたいな姿勢になっとるんです。

あのですね、自分ももうそこそこの年齢ですよ。
真っ当な社会人です。
それに先祖の侍の血を引いていますから、それなりのプライドを持って今まで生きてきましたよ。
誇りを貫いて上司に諫言した事だってありますよ。

それが膝下までズボンを下げてワイシャツをめくりながらケツだけ星人ですからね。
そして、これまた先ほどと同様に看護師さんがおもいっきしライトを当ててくるんです。
例えるなら、LUNA SEAのライブのSUGIZOのギターソロくらいのスポットライトの当て方なんですよ!
こっちはスポットライト当てられたって肛門から汚い音しか奏でられねぇーよ!!

言っておきますけど、他の看護師さんだって周りにいますからね。
もう侍も何もありゃしねぇーよ!
こんな辱めを受けるくらいなら切腹した方がマシだわ!
いや、もういっその事タマキン袋を切り裂いて死んでやるよ!

泌尿器科って今回初めて来たけどこんななの!!?
いつもこんな方法で診てくるの!!?
その場でケツだけ星人の姿勢にさせて視診するって絶対おかしいだろ!!

で、結局医者からは「陰嚢被角血管腫」だから問題ないと言われましたが、やはり細菌性の炎症や他の病気の可能性もゼロではありませんし、陰嚢被角血管腫と他の病気が偶然同時に発症している可能性だって考えられます。
なので、こちらから申し出て血液検査と尿検査をしてもらう事にしました。
なんか医者がすげぇー不機嫌な顔になってた。
おまけに、検査費用を保険のきかない自由診療にされた。

いや、違うんだって!
自分が面倒くさい患者だというのは百も承知なんですよ。
素人の考えよりもお医者さんの言う事の方が正しいに決まっているというのも重々承知しているんです。
ただ、他の病気の疑いがゼロではない以上、それを検査で証明してほしいんです。
そうでもしないと精神的に安心出来ないんです。
検査で何も検出されなくて自分が間違っていたのだとしたら、それはそれで上々な結果なんですよ。

こうして診察は終った。

ちなみにこの後、ケツだけ星人の時にタマキンと肛門にライトを当ててきた看護師さんに採血をしてもらって色々と説明を受けましたが、一度も目を合わせてくれませんでした。

「検査結果の確認は電話でも可能ですが、痛みが治まらないようであればまた来院して下さい。」

「あ、はい、ありがとうございます。(もう二度と来ねぇーよ!)」

羞恥心が癒えぬまま会計を済ませて、逃げるようにクリニックを後にするのでした。



とまあ、初めての泌尿器科はこうして幕を閉じました。

泌尿器科ってこんなアバンギャルドなところだったのかよ。
結局、薬も何も処方されなかったし、看護師さんたちの前でタマキンと肛門を晒しただけだったような気がするわ。
治療しに行っているのに心に傷を負って帰ってくるっておかしいだろ!
余計ダメージが増えちゃってるじゃねぇーか!!
むしろこっちの方が深手だよ!!


で、肝心のタマキンはと言うと、あれから痛みは軽くなり、赤い斑点も消えてきてヒゲじいの顔色は良くなってきたように思えます。

「良かったな!ヒゲじい!」

今日は日曜日。

録り溜めていたダーウィンが来た!を見ながら1日家で過ごすのでした。


眠れない!

寝なきゃいけないのに全然眠れない!
どうすんだよお前、明日休みじゃねぇーんだぞ!
焦れば焦るほど全然眠れねぇーよ!!

布団に入ってから何時間経過してんの?
何でこんなに眠れないの?
何なのこれ?
バカなのお前?

落ち着け、リラックスだリラックス。
何も考えるな。
無心で目を瞑ってれば自然と眠りにつけるはずだ。


「・・・・・・、・・・・・・、・・・・・・、」


「・・・・・・、・・・・・・、・・・・・・、」


あれ、ちょっと待てよ。
眠る時っていつもどういう風にしてたっけ?

鼻呼吸だったっけ?
それとも口呼吸だったっけ?

身体って上向きだっけ?
横向きだっけ?
腕と足はどんな形にしてたっけ?

あれ、そういえば布団ってどれくらいの位置まで掛けてたっけ?
頬の位置だっけ?
肩の位置だっけ?

目を閉じてる時って、まぶたに力は入れてたっけ?
目を閉じてもまぶたの裏側が見えるような感じがするけど、こういう時ってどうしてたっけ?

人って何のために生まれてくるんだっけ?
何のために生きてるんだっけ?
何のために働いてるんだっけ?
何か意味があるんだっけ?

宇宙ってどこまで続いてるんだっけ?
どこまで行っても終わりがないんだっけ?
無限に続いてるんだっけ?
凄いな~。


って、眠れねぇーーーよ!!!ハゲーーー!!!
何コレ!!!?
何でどうでもいい事を次々考えちゃうの!!?
もう全然眠りにつけないんですけど!!
どうしてこんなに苦戦しなきゃならねぇーーんだよ!!
眠るのってこんなに難しかったっけ!!?
こんな高度な技術を要する事を毎日やってたんだっけ!!?

待て待てウェイト!!!
落ち着け、落ち着け!!
心を落ち着かせろ!!
もう何も考えるなって!!
余計な事を考えるから頭が冴えて眠れなくなるんだよ!!

よし、リラックスだ、リラックス。
就寝する事だけに集中しろ。


「・・・・・・、・・・・・・、・・・・・・、」


「・・・・・・、・・・・・・、・・・・・・、」


・・・そういや、就寝と終身って読み方同じだよね。
あとあまり関係ないけど、終身刑の囚人って終身保険に入れるのかな?


って、知らねぇーーーよカス!!!!
そんなのどうでもいいだろーーーが!!!
寝ろって言ってんだよ!!!
お前いい加減にしろよ!!!
もう何も考えるな!!!
とにかく寝りゃいいんだよ寝りゃ!!!
今度こそ絶対寝る!!!


「・・・・・・、・・・・・・、・・・・・・、」


「・・・・・・、・・・・・・、・・・・・・、」


・・・ASKAが逮捕される直前に「ギフハブに監視されている。」とか意味不明な事を言ってたけど、ギフハブって何なんだろう?


だぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!!
ふざけんじゃねぇぇぇぇーーーーーー!!!!!
テメェーー覚せい剤なんてやって再逮捕されてんじゃねぇーよ!!!!!
何なんだよ、ギフハブって!!!!!
気になって眠れねぇーーーじゃねぇーか!!!!!
分かったよ!!!!
ネットで調べてやるよ!!!!
これ調べたら今度こそホントに寝るからな!!!!


って!!!!!
やっぱりお前の幻覚じゃねぇーーーか!!!!!
検索したけどそれらしいもんは何もヒットしねぇーーーよ!!!!
結局答えなんてどこにも無かったよ!!!!
刑務所に入って一人で「SAY YES」でも歌ってろ!!!!
ただでさえ眠れないのにパソコンデスクの前に移動させるんじゃねぇーよバカ!!!!
ベッドから出たから余計眠れなくなっちゃったじゃねぇーか!!!!!
どうしてくれんだよ!!!!
貴重な睡眠時間を返せよバカヤロー!!!!!


あーーーーーもうこんなんじゃ埒が明かねぇーーよ!!!
ちょっとタイム!!
いったん休憩!!
テレビでも見よう!!
テレビを見ていれば自然と眠たくなるはずだ!!


「・・・・・・、・・・・・・、・・・・・・、」


「・・・・・・、・・・・・・、・・・・・・、」


って!!!!!
3時過ぎてっからクソつまんねー番組しかやってねーじゃねぇーーーか!!!!
通販とCMばかりだよ!!!!
死ねよカス!!!!!
永遠(とわ)の眠りをーーー!!!!!

テレビなんて見ないでいい加減もう寝るわマジで!!!!


「・・・・・・、・・・・・・、・・・・・・、」


「・・・・・・、・・・・・・、・・・・・・、」


・・・そういや、さっきauのCMやってたな。
最近は三太郎って人気があるみたいだな。
確かに、桃太郎と金太郎と浦島太郎が同時に出てくるのって発想が面白いよね。
あそこに野々村竜太郎と山本太郎も入ってこないかな。
記者会見で号泣したり、国会前で拡声器で騒いだり、うるせぇー太郎ばっか入ってくんの。


って!!!!!
うるせぇーのはテメェーだぁぁぁーーーー!!!!!!
早く寝ろって言ってんだろ!!!!!
どうでもいい事ばっか考えてんじゃねぇーよ殺すぞハゲ!!!!!
何なんだよこの無限地獄は!!!!
益々眠れなくなっていくじゃねぇーーーか!!!!!

頼む!!!!
一生のお願いだから眠たくなってくれ!!!!

って、お前は人生で何回一生のお願いをすりゃ気が済むんだよ!!!!
こういう時だけ都合の良い野郎だなオイ!!!!

とにかくもう寝ろって!!!!
眠る事だけに集中しろ!!!!
お前、基本的にやれば出来る奴なんだから集中すれば必ず眠れるって!!!!
ビリーブ!!自分を信じろ!!!!

そうだ!!!
羊だよ羊!!!

よく眠れない時は「羊が一匹、羊が二匹」とか数えるよね!!!
これやってみよう!!!
管理人さんナイスアイデア!!!!


「羊が一匹・・・、羊が二匹・・・、羊が三匹・・・」


よしよしよし!!
この調子、この調子!!
余計な事は全く思い浮かばない!!
このまま数え続けよう!!
これなら必ず眠れるわ!!


「羊が四匹・・・、羊が五匹・・・、羊が六匹・・・、俺は絶対東京に行くからな!!」

ひろゆきの声が羊小屋の中へ響き渡った。

「何言ってやがるんだ、ひろゆき!!お前は俺の言う事を聞いてこの羊牧場を継ぎゃぁ良いんだよ!!」

「うるせぇークソ親父!俺にだって夢があるんだ!」

「何だと!!音楽だか何だか知らねぇーがそんなもんやめちまえ!!歌なんかで食ってけるほど世の中は甘かねぇーんだよ!」

「俺は親父とは違うんだ!こんな牧場出てってやる!!」

今思えば思い切りが良過ぎたのかもしれない。
喧嘩別れのように牧場を飛び出し、相棒のエレキギターだけ抱えて一人上京した。

東京ではワンルームのボロアパートに住み、居酒屋でアルバイトをしながら音楽活動を続けた。
上京すれば全て上手く行くと思ったが現実はとても厳しかった。
俺よりも良い歌を作る奴なんて大勢いる。
それどころか、生活費を稼ぐのに精一杯で最後にギターを握ったのはもう何日も前だった。
夢を追いかければ追いかけるほど、理想は手から離れていった。

アルバイトを終えて外へ出ると深夜の繁華街には雪が舞い降りていた。
故郷の函館も雪が降っているのだろうか。
ふと、牧場で働く親父の姿が目に浮かんだ。
都会の喧騒に飲み込まれ、いつの間にか孤独と虚しさが両肩に積もっていた。

しかし、それでもチャンスは巡ってきた。
CD会社の新人発掘オーディションに参加する事になったのだ。

「絶対合格してビッグになってやる!!」

オーディションの待合室で何度も曲の練習をした。

「よし、完璧だ!この曲なら絶対合格出来るぞ!!」

そう意気込んでいた時だった。

「プルルルルルル、プルルルルルル」

実家からの電話だ。
少し煩わしくもあったが、気になったので電話に出た。
電話は母からだった。

「もしもし!!ひろゆき!!?大変よ!!!お父さんが!!お父さんが倒れたの!!!」

親父の身体はもう何年も前から病に蝕まれていたらしい。

「お父さん、あんな性格だからあんたに心配をかけないように平静を装っていたけど、もう限界なのよ!」

「そんな・・・、親父・・・、俺はどうしたらいいんだ。」

「それではオーディション番号13番の函館から来たひろゆきさん、ステージへ上がって下さい。あれ?13番のひろゆきさんはいらっしゃいませんか?」

気が付いたらオーディション会場を飛び出していた。
函館の病院へ到着したのは深夜だった。

「・・・ひろゆき、音楽は・・・上手く・・いって・・るか・・?」

「ああ、勿論だよ親父。今度メジャーデビューするんだぜ!」

涙を堪えながら嘘をついた。

「・・今度・・お前の・・きょ・・く・・を、聴・・かせ・・てく・・・・・」

「いくらでも聴かせてやるさ!だから死なないでくれ親父!」

これが親父と交わした最後の言葉だった。


~5年後~

あの後、俺は実家へ戻り羊牧場を継いだ。
今では結婚して二児の父でもある。
メジャーデビューは叶わなかったけど、それ以上の大切なものを手に入れた。
家族と羊たちに囲まれ幸せな日々を送っている。

「あなたー、お昼ご飯出来たわよー!」

「ありがとう!羊たちを小屋に入れたら行くよー!」

みんなちゃんと入ったかなーーー?
それじゃあ数えるよーーー!!!


「羊が七匹ーーー!!羊が八匹ーーー!!」


今日もひろゆきの羊を数える声が小屋の中へ響き渡る。



・・・良かったな、ひろゆき君。
もうね、一人でこんなドラマチックに羊を数えていたらちょっと涙出てきちゃいましたよ。
最後は喧嘩別れしたお父さんとも仲直り出来たし、結婚して家族も出来たし、やっぱりね、人生って夢を掴むよりも幸せを手に入れる方が大切なのかもしれませんね。
きっと牧場でいつもでも幸せに暮らしていくのだと思います。

良かった、良かった。
本当に良かった。


って!!!!

良くねぇーーーよハゲ!!!!!
長ぇーーーんだよ!!!!!
誰だよ!!!!ひろゆきってーー!!!!!
こんな奴知らねぇーーよ!!!!!

もう外明るくなっちゃってるじゃねぇーーーか!!!!!
朝になっちゃったよオイ!!!!
どうすんだよこれーー!!!!

頼むから眠らせてくれ!!


「羊が九匹、羊が十匹・・・」


やっぱり眠れない。


先日、仕事関係の知人に用事があって連絡しようとしたんですけど、その人の電話番号もメールアドレスも知らないという事に気が付きましてね。
そういや連絡先交換してなかったわ。
で、どうにか連絡する手段はないものか、頭を絞って、それはもう濡れ雑巾みたいに絞って、そういえば最近頭が臭いなあぁ、床にこぼした牛乳を拭いた後の雑巾みたいな臭いがするよとか思って、まあとにかく雑巾臭い頭を絞って考えたんです。

そしたら閃いちゃいましてね。
最近ってツイッターとかフェイスブックとか、SNSをやっている人が多いじゃないですか。

なので、その人の名前で検索してみたんです。
そしたらビンゴ!
フェイスブックでヒットしましてね。
で、自分はフェイスブックなんかのコミュニティーツールに関しては個人情報の観点で消極的なんですけど、その人に連絡を取りたかったので一時的に登録する事にしたんです。
その後、無事に連絡が取れてこの件は万事解決したんですけど、ここからが今回の話でして。

フェイスブックのホーム画面には「知り合いかも」という欄があって、そこには自分と関わりのありそうな他のユーザーがリストアップされているんです。
これってどういう仕組みになっているのかフェイスブックは公表していませんが、連絡先を知っている相手だったり、登録した内容と共通点のあるユーザーをフェイスブック側のコンピューターが選別してリストアップしているそうです。

自分の「知り合いかも」には職場の同僚など主に仕事関係の人物がリストアップされていたんですけど、画面をスクロールしていったら馬渡○○という懐かしい名前を発見しましてね。
馬渡君は自分が高校生の時、いや自分の人生で一番仲の良かった友人でした。

そして、パソコンのモニターを眺めながら、あの時の楽しかった出来事が鮮明に甦った。


とまあ、ここから回想のシーンに入っていくんですけど、今回はわりとハートウォーミングなお話です。
ブスとか登場しないし、管理人さんもうんこを漏らしそうになったりもしない。
もうスタンドバイミーの回想のシーンみたいに「デゲデンツテン♪デゲデンツテン♪」ってあの曲を流してほしいくらいですよ。

「デゲデンツテン♪デゲデンツテン♪」

よし!雰囲気が出てきましたね!
このまま管理人さんの回想のシーンに入っていきますよ!

「デゲデンツテン♪デゲデンツテン♪」

「ポ~ニョ♪ポ~ニョ♪ポニョ♪さかなの子~♪」

って途中から違う映画になってるじゃねぇーか!
いや、こっちもハートウォーミングだけど!
でもジブリは関係ねぇーよ!バカかお前、死ねよカス!
脳みそがポニョってるんじゃねぇーか!?
早く回想しろ!



あれは桜の花が春風に踊っていた時でした。
遠く離れた学校、知り合いが一人もいないクラス、難解な教科書、何もかもが今までと違う環境だったので、自分はクラスに馴染めずにいました。

そんな自分に声を掛けてくれたのが同じクラスの馬渡君でしてね。
高校生になって初めて出来た友達でした。

最初は音楽の話から入ったような気がします。
当時、王道はGLAY、ニヒル気取った奴はLUNA SEA、コアな奴はSIAM SHADEと、バンドはこの3強で、そしてそれらに猛勢を掛けて人気が出てきたのがラルクでした。
まあ、プロ野球で例えると、GLAYが巨人、LUNA SEAが中日ドラゴンズ、SIAM SHADEがオリックス、ラルクが西武ライオンズといったところでしょうかね。

自分はLUNA SEAとGLAYを聴いていて、馬渡君はラルクでしたが、これって音楽性で近いものがあるので曲の話をすると会話が弾むんです。
あと馬渡君はギャグセンスや趣味も自分と同じだったので、直ぐに仲良くなりました。

自分は小学校と中学校では、クラスで仲間外れになりたくないという理由で、趣味も話も全く合わないグループに無理をして入っていましてね。
おまけに、母親が精神面に問題がある人間だったので、友達との関係には疲弊させられてばかりでした。

小学生の時は皆でプールに行こうとしても自分だけ母親から許可が出なくて行けなかったし、映画に行く時も許可が出なくて自分だけ置いていかれていました。
母は、プール=溺死、映画に行く→電車=人身事故っていう具合に、いつもデッドエンドになると思い込んでしまうんですよね。
門限を少しでも超えると連絡網でクラス中の家に電話を掛けまくるから皆に迷惑がられるし、おまけに家に帰ると号泣議員の野々村竜太郎みたいに泣きながら半狂乱になっていて恐かった。
他にも制限が多く、母の望まない事をやると直ぐに怒られてしまい、そんな状況だったのでクラスの輪に入って円滑な人間関係を維持するのはとても難しかったです。
とにかく仲間外れにされないように必死でした。

しかし、高校に入って馬渡君に出逢いましてね。
自然に付き合える友達というんですか、そんな親友が出来てとても嬉しかったのを覚えています。
馬渡君は友達想いだし、頭がキレるし、ギャグセンスも良いし、それでいて侍みたいに一本の筋が通っている。

そして何より、自分の知らない事を沢山知っていて、自分が今までいかに狭い社会で生きてきたのかが良く分かった。
何だか、海の向こうにあった世界が急に地続きになったような気がして胸が躍った。

馬渡君と仲良くなったある日、購買で一緒にお昼を食べていると、彼が突然「すげぇー事思い付いた!」と言って何かを閃いて、それはもうノーベル賞も受賞出来ちゃいそうな発明を閃いた勢いで、自動販売機の方へ走り出しましてね。
そして、何やらゴミ箱をガサゴソと漁り始めたんです。
おいおい!そんな所にノーベル賞は入ってねぇーよ!
もう何か変な悪霊に憑りつかれたんじゃないかと疑いたくなるレベルだったから少し心配になったんですけど、馬渡君はゴミ箱から取り出した空缶を次々とデポジットのマシンに入れていくんですよ。
デポジットとは、最近は見なくなりましたが、自動販売機の横に設置されていて飲み終わった空缶を入れると10円玉が出てくるあのリサイクルの機械の事です。

缶を入れて10円玉が出てくると、間髪入れずにまた次の缶を入れていく。

300円を簡単に手に入れた瞬間だった。

「これってもっと集めたら大金を稼げるんじゃないか!?」

二人の頭の中で瞬時に金額が弾き出された。

「いける!!」

見積もりの甘さはさすが高校一年生です、ノーベル賞もののバカですね。

早速その日の放課後、空缶を集めるべく二人で学校の周辺をトレジャーハントしに行きました。
学校は自宅から離れた全く知らない場所にあたったので、自分の中ではもう本当のトレジャーハントみたいな感覚でしたね。
自販機の横に設置されているゴミ箱が金貨の詰まった宝箱にすら見えてきた。

ゴミ箱のフタを二人で片っ端から開けていく。
しかし、空缶なんて袋単位で直ぐに集まるかと思っていたんですけど、これが意外と集まらないんですよね。
しかもすげぇー臭ぇーし。
記憶が曖昧ですが、それでも初日で2000円くらい手に入れたような気がします。

「よし、明日もまた探しに行こう!あのマシンの中の10円玉を全て絞り出してやろうぜ!」

夕暮れの校門で約束をして帰路についた。

まあ、お前らバイトした方がもっと効率良く稼げるだろって話なんですけど、自分は冒険するのが楽しくて仕方なかったんです。


翌日も帰りの会が終わるのと同時にトレジャーハントへ出発しました。
しかし、2袋分くらい集まったところで事件は起こった。

二人でゴミ箱を漁っていたら後ろの方から怒鳴り声が聞こえてきましてね。

「ゴラァアアアア!!!テメェあzqwxせcdrvftbgyんふmじk!!!」

振り返ってみると、ヒゲもじゃのサンタクロースをそのまま真っ黒にしたような、もうベトナムの戦場から帰還してきたばかりのサンタみたいな、戦場のメリークリスマスみたいなじいさんが物凄い剣幕でこちらに突進してくるんですよ。
何て言ってるのかは分からなかったけど、とにかく激怒しているというのだけは伝わってきた。
おそらく、ゴミ箱にはホームレスたちの間で縄張みたいなものがあり、こちらがそこへ踏み込んでしまったものだから略奪者と認識されてしまったようです。

「ヤバイ、殺される!」

まあ二人とも逃げ足の速さはトップクラスですからね。
もう脱兎の如くその場から逃げましたよ。

「ハア、ハア、ハア、振り切ったか・・・?」

「・・・ああ、もう来てない。そういえばサンタの赤白の格好ってコカ・コーラが考えて定着させたらしいぞ。」

「マジでか!?馬渡何でそんな事知ってんの?それより、コーラと言えば缶の袋どうした?」

二人とも逃げる事しか考えていなかったので、他で集めた空缶も全部置いてきちゃっていました。
自分たちが苦労して集めた空缶がじいさんのクリスマスプレゼントになった。

縄張の存在を知って少し怯みましたが、こんな事で諦めるような自分たちではなく、それからもトレジャーハントは続きました。
そして、空缶の多いゴミ箱や効率よく集めるルートなどを研究し、一人前のレジャーハンターになりかけていた時、さらなる事件が起こった。

休み時間に馬渡君が自分のところへやって来て、「管理人君大変だ!さっき3年の女子に呼び出されちゃってさ、放課後に管理人君を連れて購買へ来て!とか言うんだよ」と興奮気味に話してきましてね。
なんか馬渡君の話は要領を得なかったけど、デポジットに空缶を入れている姿にどーのこーのという事でした。
もしかしたら、これは告白というやつではなかろうか!?

おそらく、こういう事ですよ。
その3年女子は購買のデポジットに空缶を入れていた管理人さんに一目惚れしてしまった。
翌日、シャイな彼女は勇気を出して管理人さんに告白しようとする。
しかし、いきなり本人に声を掛けるのは恥ずかしい。
なので、いつも一緒にいる馬渡君に管理人さんを連れて来るよう頼んだのです。


「どんな人だった!!?」

「たぶん管理人が好きなタイプだよ!本当はおっちょこちょいなんだけど、年上としての体裁を保とうと必死になっているカワイイ系のお姉さんだった。」

「ブヒ~ィィィィ。(チクショー!的確じゃねぇーか!)」

そして帰りの会が終わった後、馬渡君と一緒にダッシュで購買へ向かった。
もう舞い上がっちゃって階段なんて10段飛ばしくらいで降りていましたからね。
地に足が着いていないとはまさにこの事です。
おまけに着地に失敗して足負傷しちゃいましたから。

購買の前へ到着して息を整えた。
このすぐ先には、本当はおっちょこちょいなんだけど年上としての体裁を保とうと必死になっているカワイイ系のお姉さんが待っている。
期待に胸が膨らんだ。
3年生なんて言ったら完全に大人の女性ですからね。
空缶を集めるために街のゴミ箱を片っ端から漁ったりとか絶対しないんだろうな。
いやこんなの小学生でもやらねぇーよ!
何を話したら良いだろうか、自分は人見知りだけどちゃんと話しが続くように頑張ろう。
さあ、ついに対面です!

紳士的な足取りで、それはもう階段で足なんて負傷していないという素振りで購買へ入った。

そしたらですね、なんかバーコードハゲのおじさんが一人で座っとるんですよ。
これがとても綺麗なバーコードで、そのままスーパーのレジに持って行って「これ下さい。」「ピッ!」ってやったら「38円」とか表示されそうなくらい綺麗なバーコードハゲでしてね。

本当はおっちょこちょいなんだけど年上としての体裁を保とうと必死になっているカワイイ系のお姉さんらしき人物はどこにもいないんですよ。
いるのはこのバーコードのおじさんだけなんです。
そしたら、そのおじさんが立ち上がってこちらにやって来ましてね。

「君たちが管理人君と馬渡君かな?」

もう状況が全く分からない。
何コレ!?

で、おじさんの話を聞いてみると、どうやらこの人は購買の管理もしている3年生の先生でして。
自分たちが外から持ち込んだ空缶を大量にデポジットに入れていたものだから、注意するために呼び出したらしい。
あれって原則、設置されている場所の缶しか入れちゃいけないんですよね。
そもそも、一個10円なんて設定で資源回収したって利益にはならないだろうし。

この後、わりと本格的に怒られた。
現実は残酷なもので、本当はおっちょこちょいなんだけど年上としての体裁を保とうと必死になっているカワイイ系のお姉さんに告白されるどころか、毛根を保とうと必死になっているバーコード系のおじさんにこっ酷く怒られて終わった。

「どういう事だよコレ!話が違ぇーじゃねーか!」

「ごめん、ごめん、管理人と一緒に来てなんて言われたから勘違いしちゃったわ。でも、おっちょこちょいな雰囲気の3年生に言われたのは本当だよ。」

「おっちょこちょいはお前だよ!」

まあ、たぶん彼は少しだけ話を変えてドッキリを仕掛けてきたのだと思う。
女子に呼び出されたなんて言うものだから、まんまと引っ掛かってしまいました。
馬渡君はこうやっていつも友達を楽しませてくれる奴でした。


そんな親友の彼とも、高校生活が終わったら自然と疎遠になり、いつの間にか連絡も取らなくなってしまいました。
結局のところ、人との信頼を維持出来ないのは全て自分に原因があり、昔と何も変わっていなかったのです。

馬渡君は今どんな生活をしているのだろうか。
彼のフェイスブックには、あの時と変わらない姿を想像させられる充実した日常が投稿されていました。
そして、過去の投稿を遡って読んでいくうちに、もう一度会ってみたいという気持ちが強くなっていきました。

彼のフェイスブックは最後の投稿から1年以上経過しています。
「便りが無いのは元気な証拠」なんていう言葉があるけど、今も元気にしていると良いな。
フェイスブックにはメール機能のようなものもあるのでメールを送っておきました。

まさか、フェイスブックなんかに馬渡君と再開出来る機会を与えられるなんて思いもしませんでしたね。

思い出は缶に似ているのかもしれない。
楽しかった出来事や悲しかった出来事も飲み干してしまえば手元に残るのは缶だけだ。
缶だけが形を変えず、思い出となっていつまでも残り続ける。
フェイスブックはそんな皆の散らばった空缶を拾い集めてくれるツールなのだろう。

SNSなんて個人情報が流出するだけだから自分は消極的だったけど、やってみたら案外良いところもあるじゃねぇーか。
フェイスブックに登録して良かったわ。


馬渡君にメッセージを送信してから2週間。
フェイスブックのメッセージボックスを覗いてみたらメールが一件届いていました。

やった!!馬渡君メール読んでくれたんだ!
気付いてくれて本当に良かった!
便りが無いのは元気な証拠なんて言うけれど、やっぱり便りがあった方が良いに決まってるよ!
何て返信したら良いか分からないけど、これだけはちゃんと伝えたい。

「色々な冒険をさせてくれてありがとう。」

そして、今度は登山や釣りだったり、こちらが馬渡君を冒険に誘ってあげるんだ。
心を躍らせながら新着のメールを開きました。


加瀬○○
『管理人てめー5000円返せ まじ殺すぞ』


あーそういえば昔の同僚からお金借りっぱなしだったわ。

やっぱりフェイスブックなんてやるもんじゃない!
こんなのやったってロクな事にならねぇーよ!
バカじゃねぇーか!

便りが無いのは返す気が無い証拠。

受け取ったメールに返信せず、そっとブラウザを閉じるのでした。

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